2階の仕事机でオンライン会議が始まった瞬間、映像が一度止まる。
1階のリビングでは何も起きないのに、上へ上がるとWi-Fiだけが機嫌を変える。
たとえば想像してみる。
家族が動画を見ている1階から、ノートパソコンを持って2階の机へ移動する。スマートフォンは6GHzにつながった表示になるのに、廊下へ出た途端に5GHzへ戻る。そこでメッシュWi-Fiを2台買えば解決すると思うが、2台の間も無線のままだ。
TP-LinkのDeco XE75は、6GHzを含むトライバンドのWi-Fi 6EメッシュWi-Fiルーターである。2台パックの公式仕様ページには、Deco同士をLANケーブルでつなぐEthernet backhaulも案内されている。
2階の遅さを解決したい家ほど、6GHzの数字より先に、階をまたぐLANの道を見たい。
この記事では、TP-Link Deco XE75(2台パック)を「2台置けば広がる機器」としてではなく、1階と2階の間の経路を選べる機器として読み直す。
既存の一般的なメッシュWi-Fiの選び方はメッシュWi-Fiの比較記事にまとめている。ここでは候補を並べず、Deco XE75を買う家と見送る家の境目に絞る。
2階の遅さは、6GHzより先に配線を見る

最初に見るのは、ルーターの世代ではなく、どこで通信が弱くなっているかだ。
1階の親機から2階の端末までを一つの無線で届かせようとしているのか。
それとも、2階に置いた子機までは無線でつながり、子機から端末へは近い距離で届いているのか。
この二つは似ているようで、原因が違う。
| 起きていること | 先に見る場所 | 判断の方向 |
|---|---|---|
| 1階は快適で、2階だけ会議や動画が止まる | 階段、床、天井をまたぐ親機と端末の距離 | 2階にノードを置く前に、親機と子機の経路を確認 |
| 2階の子機の近くは快適だが、子機から遠い部屋が遅い | 2階の子機の位置と部屋の壁 | 子機を廊下や階段寄りへ移す |
| どの部屋でも有線接続が1Gbps付近で頭打ちになる | Deco本体、スイッチ、PCのポート | 3個のギガビットポートが上限になる構成か確認 |
| 2.4GHzのセンサーだけが不安定になる | センサーと親機の距離、金属家具、電池 | Wi-Fi 6Eの6GHz対応だけでは解決しない |
2台を置くと、端末と最寄りのノードの距離は短くできる。
ただし、ノード同士の道が弱ければ、2階で受けた通信を1階へ戻すところで詰まる。
ここを先に切り分けると、「高い規格を買ったのに2階で遅い」という買い物の後悔を減らしやすい。
「2台置く」前に、親機と子機をLANでつなげるか
メッシュWi-Fiのノード間通信をバックホールと呼ぶ。
無線バックホールでは、親機と子機が電波で話す。有線バックホールでは、その道にLANケーブルを使う。
無線なら配線工事がいらない。
一方で、階段や床をまたぐ通信を、端末が使う電波と同じ家の中で維持することになる。壁、扉、家具、他の無線機器の影響を受ける余地が残る。
有線なら、親機から子機までの道をLANケーブルへ逃がせる。2階のスマートフォンやパソコンは、子機の近くで無線を使えばよい。
TP-Link JapanのEthernetバックホールFAQは、異なる階にあるDeco同士もEthernetケーブルで接続できると説明している。
| 接続方法 | 良いところ | 家で残る制約 |
|---|---|---|
| 無線バックホール | 箱から出して置きやすい | 階間の壁や床を電波で越える |
| 有線バックホール | 階間の中継経路をLANにできる | 壁内LAN、既設のLAN口、または露出配線が必要 |
| 1台運用 | 設定と電源が少ない | 家の端まで1台の電波で届かせる必要がある |
有線を選ぶと、電波がすべて不要になるわけではない。
端末と各ノードの間は無線のままだし、6GHz、5GHz、2.4GHzのどれでつながるかも端末と場所で変わる。
変わるのは、最も長くなりがちな「1階から2階へ戻る道」だ。
壁の中にLAN配線がある家なら、2台目を置くことの意味が大きくなる。
Deco XE75の6GHzは、壁を消す機能ではない

Deco XE75は、2.4GHz、5GHz、6GHzの三つの帯域を使う。
日本向け公式ページの表示は、6GHzが2402Mbps、5GHzが2402Mbps、2.4GHzが574Mbpsで、合計の規格値はAXE5400である。
数字を見ると、6GHzを使える端末を家の中のどこでも高速にできそうに感じる。
しかし6GHzが、壁や扉の影響をなくすわけではない。
端末が6GHzに対応していて、ノードから近い場所にいるときに、混雑を分ける候補になる。廊下や別室へ出れば、端末が5GHzへ移ることもある。
これは故障とは限らない。
端末が届きやすい帯域を選んだ結果かもしれない。
スマートホーム機器にも同じことが言える。
スマートプラグ、電球、開閉センサーなど、2.4GHz中心の機器は、Wi-Fi 6Eルーターを置いただけで6GHzへ移らない。6GHzは、対応するスマートフォンやパソコンの通信を近距離で分けるために使う帯域であり、2.4GHz機器の距離や電池の問題を消す機能ではない。
Wi-Fi 7と6Eの違いから機器を選びたい人は、Wi-Fi 7とWi-Fi 6Eの比較も参照してほしい。Deco XE75については、規格の新しさより「6GHzを使う端末がどこにあるか」を間取りに書くと判断しやすい。
3ポートと2台パックを、家の配線に置き換える

TP-Link Japanの仕様表で、Deco XE75は1台あたり3個のギガビットポートを備える。
ポートはWANとLANを自動判別する仕様だ。
これは使いやすい反面、10Gbps回線をそのまま活かしたい人には見逃せない制約になる。
1階の本体では、インターネット回線からの入力で1ポートを使う。2階の子機をLANでつなぐなら、子機側でも1ポートがバックホール用になる。
残りのポートへテレビやパソコンを有線でつなぐことはできるが、家の中に有線機器が多いなら、別のスイッチを置く前提で考えたい。
| 公式仕様 | 家での読み替え |
|---|---|
| 3〜5LDK(2個パック)のWi-Fi範囲表示 | 間取りと壁の枚数を優先し、面積だけで2台を決めない |
| 2個パックで最大500㎡の表示 | 実際の到達範囲を保証する数字ではなく、メーカーの目安として見る |
| 最大200台の接続台数表示 | 家電の台数が多い家の候補になるが、電波の届き方は別に確認する |
| 各ユニット3個のギガビットポート | 有線バックホール、WAN、テレビやPCの接続を先に図へ書く |
| 本体2台、LANケーブル1本、電源アダプター2個など | 1階と2階を結ぶ長さのLANケーブルは、家にあるか別に確認する |
特に大事なのは、2台パックに付属するLANケーブルが1本であることだ。
ONUやルーターから1階の親機をつなぐだけで使うなら足りるが、1階と2階を有線バックホールにするケーブルが別途必要になる構成もある。
販売ページを開いたら、2台パックであること、国内向けの型番であること、付属品の表示を確認する。
木造2階建てとRCマンションで、置き場所は変わる

同じ2台でも、家の構造が変われば置き場所は変わる。
木造2階建てなら、1階の親機を回線の引き込み位置へ置き、2階の子機を使う部屋の隣へ置きたくなる。
しかし、有線バックホールを使えるなら、子機は階段付近や2階の廊下など、家の中央寄りに置く方が端末への道を作りやすい。机の真横に置くことだけを目標にせず、2階の複数の部屋へ届く位置を探す。
RC造のマンションでは、コンクリート壁と玄関ドア、収納の金属部品が電波の通り道を変える。
2台目を寝室の奥へ置くと、子機からスマートフォンまでは近くても、親機との無線経路が長くなる。LAN口があるなら、廊下や部屋の入り口寄りに子機を置く方が確認しやすい。
| 住まい | 最初に置く場所 | 避けたい置き方 |
|---|---|---|
| 木造2階建て | 1階の回線に近い中央、2階の階段・廊下寄り | 1階の端と2階の端を無線だけで結ぶ |
| RC造2LDK | 壁の少ない中央の廊下や開口部の近く | コンクリート壁の奥、床置き、金属収納の中 |
| 3〜5LDK | 使う端末の分布とLAN口を間取りへ記入 | 公式の面積表示だけで台数と位置を決める |
TP-Link公式も、実際の範囲や速度は建物の材料、障害物、干渉、設置場所、ネットワークの複雑さなどで変わると注意している。
「500㎡だから家中に届く」とは読まない。
面積は最後に見る数字でよい。
LANを通せる家なら、2台パックの意味が変わる

有線バックホールを使うと決めたら、購入前に家の中の道を確認する。
壁内のLAN口がある家は話が早い。
1階と2階のLAN口が同じ宅内配線につながっているかを確認し、親機と子機をそれぞれの口へ接続する。
壁内配線がなければ、階段まわりを露出で通す方法もある。ドアに挟まない、足を引っかけない、電源ケーブルと混ぜないなど、見た目だけでなく安全も見る。
導入時は次の順番にすると、どこで詰まったかを戻って確認しやすい。
- ONUやホームゲートウェイ、現在のルーターの位置を確認する。
- 1階の親機を回線へ接続し、2階へLANを通すルートを決める。
- 2階の子機を階段・廊下寄りへ置き、LANケーブルを接続する。
- Decoアプリで2台を同じネットワークへ追加する。
- 子機の接続がEthernetバックホールになっているかを確認し、2階の仕事机や寝室で通信を試す。
現在のルーターを残す場合は、ルーター機能を二重にするか、Decoをアクセスポイントとして使うかを先に決めたい。
プロバイダーのIPv6接続方式や、ホームゲートウェイの設定が関わる場合もある。
つながらないときに機器を買い足す前に、いまのルーターを残す構成と、Decoへ任せる構成を一度紙に書く。
設定が終わったら、1階と2階を歩きながら接続先が変わることだけを追わない。
会議、動画、スマートホーム操作など、実際に使う場所で切れないかを確認する。
表示される帯域名より、仕事机で通話が続くかの方が家にとっては大事だ。
海外の実測で見えた、速度のピークと限界

Deco XE75の数字を日本の家に置き換えるため、海外の独立レビューも開き直した。
Tom's Guideのレビューでは、米国のテスト環境で15フィート時に1.220Gbps、50フィート時に299.1Mbps、75フィート時に318.5Mbpsを測っている。
これは日本の木造住宅やRCマンションで同じ速度が出るという意味ではない。
同じ機器でも、ノードとの距離と壁の枚数で数字が大きく変わることを読むための材料だ。
TechRadarの紹介も、Deco XE75を2.4GHz、5GHz、6GHzのトライバンド機として扱い、3個のギガビットポートを挙げている。
海外記事から日本の家へ持ち込める判断は、次の三つだ。
- 6GHz対応端末をノードの近くで使うなら、帯域を分ける意味がある。
- 階間の距離と壁で無線バックホールが弱くなる家は、LAN配線の方が判断しやすい。
- 10Gbps回線や大容量の有線転送を主目的にするなら、無線規格よりポート速度が先に制約になる。
海外レビューの数字は、買う理由を作るためではなく、数字だけで家の結果を決めないために使う。
Deco XE75は、ケーブルを1本引ける家に向く

では、家の条件で分けてみる。
TP-Link Deco XE75(2台パック)を選びやすいのは、次のような家だ。
- 1階と2階で同じWi-Fi名を使い、家の中を移動したい。
- 2階の仕事机やテレビの近くにノードを置きたい。
- 親機と子機をLANでつなげる壁内配線、LAN口、または無理のない露出配線がある。
- 1Gbps級までの回線で、スマートフォンやパソコンを複数台使う。
- 近距離の6GHz対応端末と、2.4GHzのスマートホーム機器を同じ家で使う。
反対に、次の家なら急いで買わない。
- 2台を置いても、階をまたぐバックホールは無線のままになる。
- 10Gbps回線やNAS間の有線転送が目的で、ギガビットポートが上限になる。
- 1LDKなどで、回線の近くに1台を置けば各部屋で困らない。
- 家にある機器の大半が2.4GHzで、6GHz対応端末を近距離で使う場面が少ない。
- 壁内配線やケーブルの取り回しをしたくなく、置くだけで広がることを最優先する。
買わない選択も、ネットワークの設計である。
今のルーターを部屋の中央へ移す、既存のLAN口へ有線アクセスポイントを置く、2階だけの用途を有線接続へ変える方が、家によっては支出が小さい。
購入に進むなら、リンク先で「Deco XE75/Aの2台パックか」「3個のギガビットポートか」「LANケーブルと電源アダプターが2台分あるか」を確認してほしい。
価格や在庫は販売店で変わるため、下のカードに表示される商品名、型番、セット内容を購入直前に確かめる。
よくある質問

6GHz対応のスマートフォンがなければ、Deco XE75は無意味ですか。
無意味ではない。
5GHzと2.4GHzも使えるため、対応端末がなくてもメッシュとしては動く。ただし、6GHzを使う端末が少なく、1台で家が届くなら、Wi-Fi 6Eのためだけに買い替える理由は弱くなる。
2台を必ずLANケーブルでつなぐ必要がありますか。
必須ではない。
無線バックホールでも構成できるが、2階の遅さがノード間の距離や壁に原因があるなら、有線へ逃がせるかどうかが購入判断を左右する。
今のルーターを残して使えますか。
Decoにはルーターモードとアクセスポイントモードがあるため、構成としては残せる場合がある。
ただし、ホームゲートウェイやプロバイダーの接続方式によって確認点が変わる。二重ルーターのままにせず、どの機器をルーターにするかを決めてから設定する。
2台パックの500㎡表示を、そのまま信じてよいですか。
メーカーが示す目安として見る。
日本の住宅では、床、天井、壁、扉、家具の位置が変わる。2階の端まで届くかは面積ではなく、ノードと利用場所の間の道で確かめる。
6GHzにつながらず5GHzへ切り替わるのは故障ですか。
故障とは限らない。
6GHzの電波が届きにくい場所で、端末が5GHzを選んで通信を維持している可能性がある。使う部屋で会議や動画が続くかを先に見る。





